記事のポイント
- ゴーストは自分で運転、ファントムは後席に乗る車
- ファントムはゴーストより約2000万円以上高価
- ファントムは荘厳、ゴーストはモダンなデザイン
- 運転の楽しさならゴースト、後席の快適性ならファントム
- 自分のライフスタイルに合う一台を見つけることが重要
ロールスロイスのゴーストとファントムの根本的な違い
出典:Rolls-Royce
- コンセプトの違いはオーナーかショーファーか
- 新車価格と中古車相場の価格差
- ボディサイズとエクステリアデザインの比較
- モデルの歴史とブランド内での立ち位置
- ターゲットとなる顧客層の違い
- それぞれを象徴する装備やオプション
ロールスロイスと聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、おそらく雲の上を漂うような乗り心地と、ため息が出るほど豪華な内外装でしょう。しかし、その頂点に君臨する「ファントム」と、その弟分とも言える「ゴースト」には、似て非なる、明確な哲学の違いが存在します。この二台、単に大きいか小さいか、高いか少し安いか、という単純な話ではありません。私がこれまでディーラーやカスタムショップ、そしてジャーナリストとして数えきれないほどの高級車に触れてきた中で、この二台ほど、その成り立ちからしてコンセプトが異なるモデルも珍しいと感じています。「ロールスロイスが欲しいけれど、ゴーストとファントム、一体何がどう違うんだろう?」長年、この業界に身を置く私自身も、初めて深く知った時にはその違いに驚いたものです。
この章では、まず二台の根幹にある思想の違いから、価格、デザイン、そしてブランドにおける立ち位置まで、その根本的な差異を紐解いていきましょう。この最初のステップが、あなたにとっての「最高の選択」への重要な道しるべとなるはずです。
コンセプトの違いはオーナーかショーファーか

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ゴーストとファントム、この二台を分かつ最も大きな違いは何か。それは、「誰が運転席に座ることを想定して作られているか」という点に尽きます。言ってしまえば、ゴーストは「オーナードリブン」、つまりオーナー自身がハンドルを握り運転を楽しむことを色濃く意識したモデルです。一方で、ファントムは「ショーファードリブン」、すなわちプロの運転手がハンドルを握り、オーナーは後席でゆったりと過ごすことを前提とした、究極のリムジンなのです。
オーナーインタビューで感じた事ですが、この違いは顧客のライフスタイルに面白いほど顕著に表れています。ゴーストを購入されるお客様は、週末のドライブプランを楽しそうに語る方が多く、「箱根のワインディングを流すのが楽しみでね」と目を輝かせていました。一方、ファントムを選ぶお客様は、「後席での電話会議が、会社のデスクより集中できるんだ」と、移動時間をいかに有効活用するかを重視されていました。この根本的な思想の違いこそが、ボディサイズ、走行性能、インテリアの設え、果てはオプションの選択肢に至るまで、両者のあらゆる個性を決定づけていると言っても過言ではありません。
もちろん、ゴーストの後席が快適でないわけでも、ファントムを自分で運転してはいけないわけでもありません。しかし、その設計の根底にある哲学を理解することが、両者を正しく評価する第一歩となるのです。
では、このコンセプトの違いは、具体的な車両価格にどのように反映されているのでしょうか。次にその核心に迫ってみましょう。
新車価格と中古車相場の価格差
コンセプトの違いは、当然ながら価格にも明確に表れます。新車の価格帯を見ても、ゴーストが約4,000万円からスタートするのに対し、ファントムはその上を行く約6,000万円からの世界です。この2,000万円という価格差は、国産の高級セダンが余裕で買えてしまうほどの金額であり、両者の間には明確なヒエラルキーが存在することを示しています。
この価格差は、一体どこから生まれるのでしょうか。それは、使用される素材の質と量、そして製造にかけられる手間の違いにあります。例えばファントムの内装に使われるウッドパネルは、一本の木から切り出された、木目が完璧に揃ったものだけが選ばれます。カスタムショップ時代に一度、傷ついたファントムのドアパネルを交換する機会がありましたが、そのパーツひとつひとつの作り込み、素材の希少性には、ただただ圧倒されるばかりでした。まさに工芸品、芸術品の領域です。ゴーストももちろん最高級の素材で作られていますが、ファントムは「コスト」という概念を超越したレベルで、最高のものが追求されているのです。
以下に、新車価格と、参考までにおおよその中古車相場をまとめた表をご覧ください。
| モデル | 新車時価格(目安) | 中古車相場(目安) |
|---|---|---|
| ロールスロイス ゴースト | 約3,590万円~4,200万円 | 約1,000万円~4,300万円 |
| ロールスロイス ファントム | 約5,460万円~6,670万円 | 約1,050万円~9,300万円 |
※上記はあくまで目安であり、年式、走行距離、仕様、個体の状態によって価格は大きく変動します。
中古車市場に目を向けると、ゴーストは比較的手の届きやすい価格帯の個体も見つかるようになり、選択肢の幅が広がります。一方でファントムは、中古であってもなお威厳のある価格を維持していますが、新車価格からの下落幅で考えると、ある意味でお得感が出てくるとも言えるかもしれません。ただし、どちらのモデルも維持費は相応にかかることを忘れてはなりません。
さて、この価格差にもつながる、見た目の印象や存在感を決定づけるボディサイズとデザインには、どのような違いがあるのでしょうか。
ボディサイズとエクステリアデザインの比較

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街中でロールスロイスを見かけた時、その圧倒的な存在感に思わず振り返ってしまった経験はありませんか。しかし、ゴーストとファントムを隣り合わせで比較すると、そのスケール感の違いに改めて驚かされることになります。
まず、具体的な数値で比較してみましょう。
| 項目 | ロールスロイス ゴースト | ロールスロイス ファントム |
|---|---|---|
| 全長 | 5,540mm | 5,762mm |
| 全幅 | 2,000mm | 2,018mm |
| 全高 | 1,570mm | 1,646mm |
※数値は現行モデルの標準ボディの参考値です。ファントムにはさらに全長が長いEWB(エクステンデッド・ホイールベース)も存在します。
全長で約20cm、全高で約7cm、ファントムの方が大きいことがわかります。この差は、数字で見る以上に実車の印象を大きく左右します。私がジュネーブのモーターショーで両車が並ぶ姿を目の当たりにした時の記憶は鮮烈です。ファントムはもはや自動車というより、威厳を湛えた移動する建築物のようでした。そびえ立つパルテノングリルはより高く、威風堂々としており、まさに「権威」や「格式」を体現したデザインです。
一方のゴーストは、ファントムの隣に並ぶと、どこか軽快でモダンな印象を受けます。ロールスロイスが提唱する「ポスト・オピュレンス(脱贅沢)」というミニマルなデザイン哲学が反映されており、過度な装飾を排し、流れるような美しいラインで構成されています。しかし、もちろんのことながら、単体で見ればゴーストも十分に巨大で、他のどんな車をも圧倒する存在感を放っているのは言うまでもありません。
このデザインとサイズの差は、単なる見た目の問題だけでなく、運転のしやすさや後席の居住空間にも直結してきます。この二台が、どのような歴史的背景から生まれ、ブランドの中でどう位置づけられているのかを知ると、その違いがさらに深く理解できるはずです。
モデルの歴史とブランド内での立ち位置

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ロールスロイスというブランドの歴史を語る上で、ファントムの存在は絶対に欠かすことができません。その初代モデルが登場したのは1925年。以来、約100年にわたって、常に世界の王侯貴族や国家元首、そして時代の頂点を極めた人々のための「最高の車」として君臨し続けてきました。ファントムは、単なる一台の自動車ではなく、ロールスロイスの歴史そのものであり、ブランドの魂を宿す旗艦モデルなのです。言ってみれば、不動の「王」としての地位を確立しています。
一方、ゴーストの歴史は比較的新しく、初代モデルがデビューしたのは2009年のこと。これは、ロールスロイスが新しい時代のニーズに応えるために下した、非常に戦略的な一手でした。ファントムがあまりにも絶対的な存在であるため、よりパーソナルに、そして自らの手で運転を楽しみたいと考える新しい富裕層にとっては、少しだけ敷居が高い存在でもあったのです。そこで登場したのがゴーストでした。ファントムの弟分でありながら、よりモダンでダイナミックなキャラクターを与えられ、ロールスロイスの世界への新しい扉を開く役割を担ったのです。
この関係性を例えるなら、ファントムが代々その地位を受け継ぐ「国王」であるとすれば、ゴーストは自らの実力で名を上げた、気鋭の「貴公子」と言えるかもしれません。どちらも同じ王家の血を引く高貴な存在ですが、その役割と背負う期待は異なります。ファントムはブランドの伝統と格式を守り、ゴーストはブランドに新しい活力と可能性をもたらす。この絶妙なバランスが、現在のロールスロイスの強さを支えているのです。
では、こうした異なる背景を持つ二台は、それぞれどのような人々を惹きつけているのでしょうか。次に顧客層の違いを見ていきましょう。
ターゲットとなる顧客層の違い
モデルのコンセプトや歴史が異なれば、当然ながらその車を求める人々の層も変わってきます。私がディーラーやモータージャーナリストとして出会ってきたオーナーの方々を思い返しても、ゴーストとファントムでは、その人物像や車に求める価値観に興味深い違いが見られました。
ファントムを選ぶのは、まさに「ショーファードリブン」というコンセプトを体現するような方々です。大企業の創業者や会長、あるいは代々続く資産家など、その存在自体が社会的地位の象徴となる人々。彼らにとって、移動時間はビジネスの続きであったり、あるいは外界から遮断された完全なプライベート空間であったりします。以前お会いしたある経営者は、「ファントムの後席は、世界で最も静かで落ち着ける執務室だ」と語っていました。彼らにとってファントムは、単なる移動手段ではなく、そのステータスと哲学を映し出す鏡のような存在なのです。
対照的に、ゴーストはより幅広い層から支持されています。特に、自らの手でビジネスを成功させた若手の起業家や、クリエイティブな仕事で名を馳せるアーティスト、特定の分野を極めた専門家などに人気があります。彼らは、最高の品質や快適性を求めつつも、それを自ら運転して味わうことに喜びを見出す傾向があります。「仕事の成功のご褒美に買ったけれど、一番の楽しみは週末に家族を乗せて遠出すること」と嬉しそうに話してくれたIT企業の社長の笑顔は、今でも忘れられません。ゴーストは、成功の証でありながら、同時に人生を謳歌するための最高のパートナーという側面が強いのです。
このように、顧客層の違いは、それぞれの車が持つ固有の魅力と深く結びついています。では、その魅力を具体的に形作っている装備やオプションには、どのような違いがあるのでしょうか。
それぞれを象徴する装備やオプション

ゴーストとファントム、そのコンセプトの違いは、選べる装備や特徴的なオプションにも色濃く反映されています。どちらも無数のカスタマイズが可能ですが、その方向性には明確な違いがあり、まさに「誰のための車か」を物語っています。
ファントムを象徴する装備といえば、後席の乗員をもてなすための究極の設えの数々です。その最たるものが、ダッシュボードの助手席側に設けられた「ザ・ギャラリー」でしょう。これは単なる装飾パネルではなく、オーナーが選んだアーティストによる作品を収めることができる、文字通りのアートスペース。車内に自分だけの美術館を持つという発想は、ファントムならではの贅沢です。他にも、後席からボタン一つで展開できるプライバシーを確保するためのパーティションスクリーンや、最高級のシャンパンを最適な温度で楽しめるクーラーと専用グラスキャビネットなど、後席こそが主役であることを物語る装備が満載です。
一方のゴーストは、よりモダンでテクノロジーに焦点を当てた装備が特徴的です。夜空を室内に再現する「スターライトヘッドライナー」は、今やロールスロイスの代名詞的なオプションですが、この幻想的な装備をより多くの顧客に広めたのはゴーストの功績と言えるでしょう。また、現行ゴーストでは、サスペンションが路面を先読みして最適な設定に調整する「プラナー・サスペンション・システム」など、ドライバー自身がその恩恵を直接感じられる先進技術が積極的に採用されています。これは、あくまで運転する喜びを追求するゴーストの思想の表れです。
カスタムショップ時代、ゴーストのオーナーから「もう少しだけスポーツ走行時の応答性を高めたい」という、足回りのセッティングに関する相談を受けたことがあります。しかし、ファントムで同様の依頼を受けたことは一度もありません。これもまた、両車の性格の違いを如実に示すエピソードと言えるでしょう。
さて、これまで両者の根本的な違いを見てきましたが、ここからはより具体的に、あなたが実際に乗るシーンを想像しながら、それぞれのモデルの個性をさらに深く掘り下げていきます。
ロールスロイスのゴーストとファントムの違いを知り選ぶ

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- エンジン性能と走行フィーリングの比較
- インテリアの豪華さとカスタマイズの自由度
- 後部座席の快適性と専用装備の違い
- 運転のしやすさと取り回しの感覚
- 中古車市場でのリセールバリューと注意点
- 結論 どちらのモデルがあなたにおすすめか
さて、ゴーストとファントムの根本的なコンセプトの違いをご理解いただけたところで、ここからはさらに踏み込んで、あなたが実際にオーナーになった場面を想像しながら、より具体的な比較をしていきましょう。エンジンのフィーリングからインテリアの設え、そして現実的な運転のしやすさや将来的な価値まで。私がこれまでの経験で感じてきた、カタログスペックだけでは伝わらない「生きた情報」を交えながら、あなたにとって最適な一台を見つけるためのヒントをお届けします。この章を読み終える頃には、あなたの心は、きっとどちらか一台へと大きく傾いているはずです。さあ、究極の選択の旅を続けましょう。
エンジン性能と走行フィーリングの比較

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ゴーストとファントムは、奇しくも現行モデルでは同じ排気量の6.75リッターV型12気筒ツインターボエンジンを搭載しています。最高出力も571馬力と共通しており、スペック表だけを見ると「走りは同じようなもの?」と思われるかもしれません。しかし、実際にステアリングを握ってみると、そのフィーリングは全くの別物です。これは、両車のコンセプトに合わせて、エンジンのチューニングや車体との組み合わせ方が根本的に異なるためです。
ファントムの走りを一言で表すなら、「威風堂々」。アクセルを深く踏み込んでも、エンジンが唸りを上げることはありません。ただ、分厚いトルクの波が、巨大な車体をどこまでも静かに、そして滑らかに押し出していきます。まるで重力を感じさせないかのような、独特の浮遊感。これはロールスロイスが「ウェイフタビリティ」と呼ぶ感覚で、特にファントムでは、路面の凹凸や外の喧騒といった俗世の全てから乗員を切り離すことに主眼が置かれています。あくまで主役は後席の乗員であり、運転は黒子に徹するべき、という思想が走りにも貫かれているのです。
一方のゴーストは、よりドライバーとの対話を重視したセッティングが施されています。アクセルに対する反応はファントムよりも明らかに鋭敏で、望めばスポーツカーのような力強い加速を味わうことも可能です。ジャーナリストとしての試乗でワインディングロードを走らせた際には、その巨体からは想像もつかない軽快な身のこなしに、思わず笑みがこぼれたほどです。現行モデルでは四輪駆動が採用されたこともあり、安定感も抜群。「魔法の絨毯」という比喩は両車に当てはまりますが、ファントムがどこまでも穏やかな平原を飛ぶ重厚な絨毯なら、ゴーストは時に俊敏に空を駆け巡ることもできる、しなやかなシルクの絨毯と言えるでしょう。
この走りの違いを味わった上で、次に目を向けるべきは、その時間を過ごす室内空間の個性です。
インテリアの豪華さとカスタマイズの自由度

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ロールスロイスの真髄はインテリアにあり、と言っても過言ではありません。そして、ゴーストとファントムでは、その豪華さの表現方法が異なります。どちらも世界最高峰の職人技と素材の結晶であることに疑いの余地はありませんが、目指す方向性が違うのです。
ファントムのインテリアは、まさに「走る貴賓室」あるいは「移動する宮殿」です。広大な空間に、最高級のレザー、ウッド、そして金属が惜しげもなく使われ、どこを見ても、どこに触れても、ため息が出るほどの重厚感と荘厳さに満ちています。そして特筆すべきは、ビスポーク(完全オーダーメイド)プログラムにおける圧倒的な自由度です。オーナーの家系に伝わる木材を使ったり、好きな画家の作品をダッシュボードの「ギャラリー」に飾ったりと、その可能性は無限大。ファントムのインテリアは、オーナーの権威と美意識を、これ以上ないほど雄弁に物語るキャンバスなのです。
対してゴーストのインテリアは、「モダンラグジュアリー」という言葉がしっくりきます。華美な装飾を削ぎ落としたミニマルなデザインの中に、本質的な心地よさと洗練された美しさが宿っています。もちろん、使用される素材は超一級品。例えば、無数のLEDで夜空を表現する「イルミネーテッド・フェイシア」は、エンジンを停止している時だけその輝きを現すという、奥ゆかしい演出が施されています。ファントムが「見せるための豪華さ」をも意識した、ある種クラシックな様式美を追求しているのに対し、ゴーストはオーナー自身が日常的に触れ、リラックスするための、よりパーソナルで現代的な上質さを目指しているように感じます。
どちらの空間に身を置きたいか。それは、あなたが車に求めるものが、非日常の荘厳さなのか、それとも日常に寄り添う究極の心地よさなのかによって、答えが変わってくるでしょう。特に後席での時間を重視するなら、次の比較は決定的な意味を持つかもしれません。
後部座席の快適性と専用装備の違い

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ここまで繰り返し述べてきたように、ファントムは後席の乗員のために存在する車です。したがって、後部座席の快適性という点においては、議論の余地なくファントムがゴーストを圧倒します。これはゴーストが劣っているという意味ではなく、そもそも設計のプライオリティが全く異なるからです。
ファントムの後席は、単に「広い」という言葉では表現しきれません。特にホイールベースを延長したEWB(エクステンデッド・ホイールベース)モデルの広大さは、まるでプライベートジェットのようです。足を組むどころか、ゆったりと伸ばしてもまだ余裕があるほどのレッグルーム。分厚く、体を優しく包み込むシートに身を預ければ、走行中であることすら忘れてしまうほどの静粛性と、雲の上を漂うような乗り心地に満たされます。友人のジャーナリストがファントムEWBの後席で原稿を執筆した際、「都内のどのホテルのラウンジよりも静かで集中できた」と話していたのが印象的でした。これに加えて、ボタン一つで展開する大型モニターや冷蔵庫、ピクニックテーブルといった専用装備が、移動時間を最高に贅沢なひとときへと昇華させます。
一方、ゴーストの後席も、もちろん世界トップクラスの快適性を備えています。十分な広さと上質なシート、静かな室内空間は、長距離の移動でも疲れを感じさせないでしょう。しかし、その設えはあくまで「非常に快適な後席」の範疇であり、ファントムのような「後席のための空間」という絶対的な思想とは一線を画します。言ってしまえば、ゴーストの後席は、大切な家族や友人を乗せるための最上級のもてなしの場。対するファントムの後席は、世界のVIPをもてなすための公式なレセプションルーム、という違いがあるかもしれません。
後席の快適性を最優先するなら選択は明白ですが、自分で運転する機会が多いなら、次のポイントがより重要になってきます。
運転のしやすさと取り回しの感覚
どんなに素晴らしい車でも、日本の道路環境で日常的に使うとなれば、運転のしやすさは無視できない要素です。この点においては、ボディサイズが一回りコンパクトなゴーストに明確なアドバンテージがあります。
ファントムの全長は5.7m超、全幅は2mを超えます。これは都内の狭い路地や、多くの商業施設の駐車場では、かなり気を遣うサイズです。知人のファントムを借りた時の事ですが車庫入れする際は、いつも以上に周囲の確認に神経を集中させたものです。もちろん、四輪操舵システム(後輪も操舵する機能)などの最新技術が搭載されており、巨体を感じさせない驚くほどスムーズな動きを見せますが、物理的な大きさだけはどうすることもできません。
その点、ゴーストはファントムに比べれば、日常的な取り回しが格段に楽になります。全長も全幅も一回り小さいことで、精神的なプレッシャーが大きく軽減されるのです。この「少しの差」が、週末に気軽に「ちょっと乗っていこうか」と思えるかどうかの分かれ目になることも少なくありません。もしあなたが、特別な日だけでなく、日常の様々なシーンでロールスロイスとの生活を楽しみたいと考えているのであれば、ゴーストの扱いやすさは非常に大きな魅力となるでしょう。
自分で運転する楽しさと、それに伴う現実的な使い勝手。これは、オーナードリブンを標榜するゴーストが最も輝くポイントの一つです。
さて、購入後の満足度を左右するもう一つの現実的な側面、リセールバリューと中古車選びの注意点についても見ていきましょう。
中古車市場でのリセールバリューと注意点
ロールスロイスを所有することは、多くの人にとって夢の実現ですが、同時に現実的な側面として、その資産価値、つまりリセールバリューも気になるところでしょう。また、中古車での購入を検討する場合、どこに注意すれば良いのでしょうか。
まずリセールバリューですが、一般的にロールスロイスのような超高級車は、新車からの価格下落率が比較的大きい傾向にあります。特に最初の数年間での下落は顕著です。しかし、一定の年数が経過すると価格は安定し、極端に値崩れすることは少なくなります。ファントムは絶対的な価値が高いため、年式が古くても高値を維持しますが、ゴーストの方が市場に出回る台数が多く、価格帯の幅も広いため、中古車としては探しやすいかもしれません。
中古車を選ぶ上で、最も重要なのは「個体のコンディションを見極めること」です。私がカスタムショップにいた頃、格安の中古ロールスロイスを購入して、その後の高額な修理費に頭を抱えるお客様を何人も見てきました。特に注意したいのが電子制御系のトラブルです。ファントムもゴーストも、快適な乗り心地を実現するために複雑なエアサスペンションや電子デバイスを数多く搭載しており、一度不具合が起きると修理費用は国産高級車一台分に相当することさえあります。購入を検討する際は、価格の安さだけで判断せず、必ずロールスロイスの整備経験が豊富な、信頼できる専門店で、整備記録がしっかりと残っている個体を選ぶようにしてください。
初期のゴーストはBMW 7シリーズと一部のコンポーネントを共有しているため、ファントムに比べると比較的メンテナンスしやすいという側面もありますが、それでも維持費は「ロールスロイス基準」であることを心に留めておくべきです。賢い中古車選びは、焦らず、信頼できるプロの目利きを頼ることが成功の鍵となります。
さあ、これまでの情報を踏まえ、いよいよ最終結論です。あなたに相応しいのは、ゴーストか、それともファントムか。
結論 どちらのモデルがあなたにおすすめか

ここまで、ロールスロイスのゴーストとファントムについて、コンセプトから性能、使い勝手まで様々な角度から比較してきました。どちらも自動車という工業製品の枠を超えた、芸術品とも言える存在であることは間違いありません。最終的にどちらを選ぶべきか。それは、あなたが車に何を求め、どのようなライフスタイルを送りたいのかという、あなた自身の価値観にかかっています。
最後に、ここまでの内容をまとめた比較表と、それぞれがどのような方におすすめかを整理してみましょう。
| 項目 | ロールスロイス ゴースト | ロールスロイス ファントム |
|---|---|---|
| コンセプト | オーナードリブン(自分で運転) | ショーファードリブン(後席に乗る) |
| キャラクター | モダン、ダイナミック、パーソナル | 荘厳、伝統、フォーマル |
| 運転の楽しさ | ★★★★★ | ★★★☆☆ |
| 後席の快適性 | ★★★★☆ | ★★★★★+ |
| 日常の扱いやすさ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
| ステータス性 | ★★★★☆ | ★★★★★+ |
| おすすめの用途 | 週末のドライブ、家族旅行、日常の足 | ビジネスでの送迎、公式行事への出席 |
この表を踏まえて、結論として以下のように提案させていただきます。
もし、あなたが「自らの手でステアリングを握り、最高のドライビング体験を通じて人生を謳歌したい。そして、その成功の証を、モダンで洗練された形で表現したい」と考えるなら、選ぶべきは「ゴースト」です。日常に寄り添う扱いやすさと、いざという時のダイナミックな走りは、あなたの毎日をかつてないほど豊かに彩ってくれるでしょう。
一方で、もしあなたが「移動時間を究極に静かで快適なプライベート空間として活用し、ビジネスや思索に集中したい。そして、最高の格式と威厳をもって、自らの社会的地位を示したい」と望むのであれば、その選択肢は「ファントム」以外にはありえません。後席に乗ることで初めて見えてくる景色、感じられる時間の流れは、ファントムのオーナーだけに許された特権です。
この記事が、あなたの究極の選択の一助となれば、これほど嬉しいことはありません。ぜひ一度、お近くのショールームで、あるいは信頼できる専門店で、両方の実車に触れてみてください。その圧倒的なオーラを肌で感じたとき、カタログスペックや言葉では伝えきれない、あなた自身の魂に響く一台が、きっと見つかるはずです。
ロールスロイスのゴーストとファントムの違いのまとめ
ロールスロイスのゴーストとファントム、その最大の違いはコンセプトにあります。ゴーストはオーナー自身が運転を楽しむ「オーナードリブン」モデルで、モダンなデザインと軽快な走りが特徴です。一方、ファントムは後席の快適性を極めた「ショーファードリブン」モデルで、圧倒的な存在感と荘厳さを誇ります。この思想の違いが価格、サイズ、内装、装備のすべてに反映されており、ターゲットとなる顧客層も異なります。ゴーストは日常にも溶け込むパーソナルな高級車、ファントムはステータスを象徴する移動する貴賓室と言えるでしょう。この記事で両車の本質を理解し、あなたの価値観に合う究極の一台を見つける旅を始めてみませんか。
よくある質問
ゴーストとファントムの一番大きな違いは何ですか?
「誰が運転するか」という根本的なコンセプトの違いです。ゴーストはオーナー自身が運転する「オーナードリブン」、ファントムは運転手付きで後席に乗る「ショーファードリブン」を想定して設計されており、この思想が車のあらゆる特徴を決定づけています。
新車の価格はどれくらい違いますか?
新車価格では、ゴーストが約4,000万円からなのに対し、ファントムは約6,000万円からと、約2,000万円以上の明確な価格差があります。これは使用される素材の質や量、製造にかけられる手間の違いによるものです。
日本の道路で運転しやすいのはどちらですか?
ボディサイズが一回りコンパクトなゴーストの方が、日本の道路環境では格段に運転しやすいです。ファントムも四輪操舵などで運転をサポートしますが、物理的な大きさから、特に都心部や狭い駐車場での取り回しには気を遣います。
後部座席の快適性を重視するなら、どちらを選ぶべきですか?
後席の快適性を最優先するなら、選択肢はファントム一択です。ショーファードリブンを前提に作られており、広大な空間、最高級のシート、静粛性、専用の豪華装備など、すべてが後席の乗員のために最適化されています。
中古車で買うときの注意点は何ですか?
最も重要なのは個体のコンディションです。特に複雑な電子制御系やエアサスペンションの不具合は高額な修理費に繋がります。価格の安さだけで判断せず、必ずロールスロイスの整備経験が豊富な、信頼できる専門店で整備記録が確かな個体を選んでください。
エンジンは同じなのに、なぜ走りのフィーリングが違うのですか?
同じ6.75L V12ツインターボエンジンを搭載していますが、車のコンセプトに合わせてチューニングが異なります。ゴーストはドライバーとの対話を重視し鋭敏でスポーティな味付け、ファントムは後席の快適性を最優先し、どこまでも静かで滑らかな乗り心地を追求しています。
ファントムにしかない特別な装備はありますか?
ファントムを象徴するのが、ダッシュボードにオーナーが選んだアート作品を飾れる「ザ・ギャラリー」です。また、後席のプライバシーを守るパーティションスクリーンや、専用のシャンパンクーラーなど、後席の乗員をもてなすための究極の装備が用意されています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。ゴーストとファントムは、同じロールスロイスでありながら「誰のための車か」という思想から根本的に異なる存在です。ゴーストは自ら運転して楽しむモダンでパーソナルな一台、ファントムは後席を究極に磨き上げた移動する貴賓室。その違いを理解することが、自分のライフスタイルに合った一台を選ぶ第一歩になります。私自身、販売現場や取材を通じて両者に触れるたびに、その奥深さとブランド哲学の豊かさを実感してきました。この記事が、あなたにとっての「最高の選択」への指針となれば嬉しいです。機会があれば、同じショーファードリブン系モデルとの比較や、EV時代におけるロールスロイスの進化についても触れてみたいと思います。



