新型クラウンはなぜ失敗と言われる?売れない・ダサい評価の真相

new_crown_failure_reason クラウン

渡辺 悠真

こんにちは、モータージャーナリストの渡辺悠真です。長年日本の高級車を象徴してきたクラウンが、クロスオーバーとして大変貌を遂げました。「失敗」「ダサい」と囁かれる真相を、販売データや試乗評価をもとに多角的に解剖します。

記事のポイント

  • 伝統的なセダン像を覆すデザインとコンセプト
  • シリーズ販売台数は回復も中身には課題あり
  • 快適性よりスポーティな走りを重視した性能
  • 若者層とグローバル市場への大きな挑戦
  • 「失敗」ではなく生き残りをかけた「革命」

「なんだ、これは…」。ガラス張りのショールームに鎮座する、見慣れないシルエットの車。そのエンブレムが、長年日本の高級車の象徴であったはずの「王冠」だと気づくのに、少し時間が必要でした。ネットをザワつかせる「新型クラウンは失敗だ」「ダサい」「売れてない」という辛辣な声。あなたも、その変貌ぶりに戸惑い、本当の評価が気になっているのではありませんか?ディーラーマンとして幾多のクラウンをお客様に届け、カスタムショップでその進化と深化を見つめてきた私でさえ、初めて16代目と対峙した2022年の夏、正直なところ言葉を失いました。この記事では、単なるスペックや評判の羅列ではなく、私が現場で見て、触れて、感じてきた生々しい事実と、時に苦い失敗談を交えながら、この「クラウン維新」の真相を多角的に解き明かしていきます。

新型クラウンが招いた失敗?デザイン面の評価

賛否両論を呼ぶ新型クラウンのデザインを評価

  • 伝統的なセダン像からの大きな乖離
  • クロスオーバーという斬新すぎるコンセプト
  • 賛否両論を呼んだフロントマスクのデザイン
  • 歴代ファンを戸惑わせたシルエットの変化
  • 内装の質感は高級車の水準を満たしているか
  • 複数ボディタイプの展開は迷走しているのか

2022年、16代目としてデビューした新型クラウンが市場に投じた波紋。その中心にあったのは、間違いなく70年近い歴史を根底から覆すかのような、大胆すぎるデザインの変革でした。特に、長年のファンや日本の高級車市場を知る者にとって、その変化は「驚き」を通り越して「戸惑い」として受け止められた側面が強いのです。私もジュネーブやフランクフルトのモーターショーで世界のデザイントレンドを見てきましたが、まさかあのクラウンがここまで変わるとは、想像の埒外でした。ここでは、なぜ新型クラウンのデザインが「失敗」とまで言われるのか、その具体的なポイントを一つひとつ、私の経験を交えながら深掘りしていきましょう。

伝統的なセダン像からの大きな乖離

伝統的なセダンの常識を覆す革新的なデザインの車

「いつかはクラウン」。この有名なキャッチコピーが生まれたのは1983年の7代目(S120系)ですが、それは単なる広告の言葉ではありませんでした。日本のドライバーにとって、クラウンとは後輪駆動(FR)ならではの伸びやかなボンネット、風格のある佇まい、そして後席の快適性を重視した、いわば「成功者の証」たる重厚長大なセダンの象徴だったのです。ディーラー時代、私が担当したお客様の中には、「後席に人を乗せるからクラウンなんだ」と、その乗り心地とステータス性を何よりも重視する方が数多くいらっしゃいました。

しかし、16代目クラウン(クロスオーバー)は、その伝統的な価値観を根底から覆します。リフトアップされた車高、クーペのようなルーフライン、そしてFF(前輪駆動)ベースの4WDという成り立ち。これらは、もはや我々が知るクラウンの文法とは全く異なるもの。もちろん、ゼロクラウン(12代目)の時も大きな変革はありましたが、あれはあくまで「FRセダン」という枠組みの中での若返りでした。ふと、カスタムショップ時代に、車高を上げたセダンに大径ホイールを履かせる「ハイライザー」という北米のカスタムスタイルを思い出しましたが、まさかメーカー自身がクラウンでそれに近いコンセプトを打ち出してくるとは…。多くの歴代オーナーが感じたであろう「これは、私の知っているクラウンではない」という寂寥感こそが、「失敗」という評価の根源にあるのは間違いないでしょう。

しかし、セダンというカテゴリー自体が世界的に縮小しているのも事実。この大胆な変革は、果たして無謀な挑戦だったのでしょうか?それとも、生き残りをかけた必然の選択だったのでしょうか。次に、この変革の核となる「クロスオーバー」というコンセプトそのものに、さらに焦点を当ててみたいと思います。

クロスオーバーという斬新すぎるコンセプト

斬新なコンセプトであるクロスオーバーを解説するイメージ図

なぜ、トヨタはクラウンをセダンではなく「クロスオーバー」として生まれ変わらせたのか。この問いの答えは、近年の世界的な市場動向、すなわちSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)の圧倒的な人気にあります。セダン市場が縮小し続ける中で、クラウンというブランドを存続させるためには、もはや伝統的なセダンの形に固執することはできなかった。これがトヨタの出した結論なのでしょう。

実のところ、セダンとSUVを融合させる試みは、これが初めてではありません。例えば、私がカスタムショップで扱っていたアウディの「オールロードクワトロ」や、過去には日産の「スカイラインクロスオーバー」といったモデルも存在しました。しかし、それらはいずれも、既存のファン層とは異なるニッチな市場を狙ったモデルという側面が強かったのです。対してトヨタは、ブランドの顔ともいえるクラウンで、このクロスオーバーというコンセプトを真正面から打ち出した。この決断の重みは計り知れません。

「徳川幕府も15代で終わった。16代目はクラウンの明治維新だ」という開発陣の言葉は、まさに過去との決別宣言。しかし、この「明治維新」は、長年クラウンを支えてきた「幕府側」の家臣たち、つまり歴代オーナーからすれば、寝耳に水だったのではないでしょうか。ディーラー時代、クラウンを購入されるお客様の多くは、視界の良さや乗り降りのしやすさよりも、セダンならではの低い重心がもたらす安定した走りや静粛性を評価していました。クロスオーバー化は、そうした顧客が大切にしてきた価値観とは、ある意味で真逆のベクトルを向いていたのです。この斬新すぎるコンセプトが、新しい顧客を掴むための「妙手」となるか、それとも既存のファンを切り捨てる「悪手」となるか。その評価は、いまだ定まっていないのかもしれません。

そして、この新しいコンセプトを体現する顔つき、フロントマスクもまた、大きな議論を巻き起こすことになりました。

賛否両論を呼んだフロントマスクのデザイン

賛否が分かれる個性的な車のフロントマスク

新型クラウンの顔を見て、多くの人が新型プリウスやbZシリーズを連想したのではないでしょうか。一直線に伸びるデイタイムランニングランプと、その下に配置されたメインのヘッドランプユニット。これは「ハンマーヘッド」と呼ばれるトヨタの新しいデザイン言語です。グローバルでデザインの統一感を持たせ、ブランドイメージを強化するという狙いは理解できます。2023年にドイツのミュンヘンで開催されたIAA MOBILITY(国際モーターショー)を訪れた際も、多くのメーカーがブランド共通のデザイン言語を強調していましたから、これは世界的な潮流でもあるのでしょう。

しかし、問題は、それが「クラウン」の顔として相応しいか、という点です。歴代クラウンは、常にその時代を象徴する威風堂々としたフロントグリルを持っていました。特に14代目の「稲妻グリル」は賛否両論ありましたが、良くも悪くも強烈な個性を放ち、「これがクラウンだ」と一目でわかるアイコンだったのです。ところが、新型クラウンのフロントマスクには、歴代モデルが受け継いできた「王の威厳」や「日本の高級車」といった文脈が感じられにくい。むしろ、良く言えば未来的でクリーン、悪く言えば没個性的で、トヨタの他の車との見分けがつきにくい、という声が上がるのも無理はありません。

私の失敗談をひとつ。カスタムショップ時代、あるお客様のBMWのキドニーグリルを社外品のブラックグリルに交換したことがありました。作業後、お客様は満足されたものの、その息子さんから「なんか普通になっちゃったね」とポツリと言われたのです。アイコンとは、時に古臭く見えても、その車の魂そのもの。新型クラウンのフロントマスクは、グローバル基準の洗練を手に入れた代償に、日本市場で長年培ってきた「一目でわかるクラウンらしさ」という、かけがえのない資産を失ってしまったのかもしれません。

顔つきだけでなく、車全体の形、シルエットの変化もまた、長年のファンを戸惑わせるには十分すぎるものでした。

歴代ファンを戸惑わせたシルエットの変化

歴代ファンを戸惑わせたキャラクターのシルエットの変化を比較する画像

車の印象を決定づけるのは、顔つきだけではありません。横から見たときのプロポーション、つまりシルエットは、その車の成り立ちや性格を雄弁に物語ります。そして、歴代クラウンは紛れもなく「FRセダン」のシルエットを持っていました。エンジンを縦に置き、後輪を駆動させるFRレイアウトは、設計上、前輪をより前方に配置できるため、ボンネットが長く、乗員スペースが後方に寄った、いわゆる「ロングノーズ・ショートデッキ」の優雅なプロポーションを実現しやすいのです。

ところが、新型クラウン(クロスオーバー、スポーツ、エステート)は、カムリなどと同じFF(前輪駆動)ベースのプラットフォームを採用しました。これにより、シルエットは大きく変わります。エンジンを横置きにするため、フロントオーバーハング(前輪より前の部分)が長くなりがちで、相対的にボンネットの伸びやかさは失われます。さらに、クーペ風のルーフラインと、後席ドアの後ろにもう一つ窓を設けた「シックスライト」のデザイン。これはこれでスタイリッシュではありますが、伝統的なスリーボックスセダン(エンジンルーム、キャビン、トランクが明確に分かれた形)に慣れ親しんだ目には、どうしても腰高で、どこか落ち着きのない印象に映ってしまうのです。

実のところ、このシックスライトのデザインは、15代目クラウンでも採用されて物議を醸しました。日本の道路事情に合わせた全幅1800mmという制約の中で、伸びやかさを演出しようとした結果、デザインに無理が生じ、破綻しているとまで酷評されたのです。新型では車幅の制約から解放されたことでデザインの自由度は増しましたが、「クラウンかくあるべし」という長年の刷り込みを持つファンにとって、この新しいシルエットは、やはり違和感の塊として映ったことでしょう。「王冠」を載せるにふさわしい、どっしりとした風格が薄れてしまったと感じる人が多いのも、当然のことかもしれません。

外見の変貌ぶりに驚かされますが、では、ドライバーが常に触れる内装の評価はどうなのでしょうか。高級車の本質が問われる部分です。

内装の質感は高級車の水準を満たしているか

高級車の水準を満たす上質な内装の質感

「この価格でこの内装は、ちょっと…」。新型クラウンのインテリアに対して、こうした厳しい声が聞かれるのも事実です。特に指摘が多いのは、細部のコストダウンの痕跡。例えば、一部グレードでセンターコンソールのカップホルダーに蓋がないこと、ボンネットを開けると高級車なら当然装備されているガスダンパーがなく、昔ながらの「つっかえ棒」で支える仕様であることなどが挙げられます。

ディーラー営業時代、クラウンをご検討されるお客様は、カタログスペック以上に室内の「おもてなし感」を重視されていました。しっとりとしたソフトパッドの触感、スイッチ類のクリック感、木目調パネルの深み。そうした五感に訴える部分こそが、クラウンの価値だと信じて購入されていたのです。その点、新型クラウンのインテリアは、水平基調でモダンなデザイン、大型ディスプレイなど先進的な要素を取り入れつつも、素材の質感や細部の作り込みにおいて、歴代モデルが築き上げてきた「重厚な高級感」には及ばない、という印象は否めません。

特に比較対象として槍玉に挙げられるのが、トヨタの高級車ブランドであるレクサスです。例えば、車格としては下になるレクサスNXと比較しても、新型クラウンは12.3インチのディスプレイに対し、NXは14インチの大型ディスプレイを選択できます。シフト周りのパネルも、ピアノブラックで仕上げられたNXに対し、クラウンはプラスチックの質感が目立つ、といった指摘もあります。「クラウン」という名前に期待される質感と、実際のグローバルモデルとしてのコスト感覚との間にギャップが生じてしまっているのです。これは、単にチープというわけではなく、目指す高級感の方向性が「伝統的な日本の高級」から「世界基準のモダン」へとシフトした結果とも言えますが、長年のファンが寂しさを覚えるのは無理もないでしょう。

デザイン、コンセプト、内装と見てきましたが、そもそも4つものボディタイプを用意するという戦略自体が、迷走しているようにも見えます。その点についても考察してみましょう。

複数ボディタイプの展開は迷走しているのか

新型クラウンは、最初に登場した「クロスオーバー」に続き、「スポーツ(SUV)」「セダン」「エステート(SUVワゴン)」という4つの異なるボディタイプを順次展開するという、異例の戦略を取りました。これは、多様化するユーザーのライフスタイルに「クラウン」という統一ブランドで応えようという、野心的な試みです。しかし、この戦略は「選択肢の豊富さ」と評価される一方で、「ブランドイメージの拡散」「迷走」と捉えられる危険性もはらんでいます。

特に複雑なのが、その成り立ちです。クロスオーバー、スポーツ、エステートがFFベースの「GA-Kプラットフォーム」を採用しているのに対し、セダンだけはFRベースの「GA-Lプラットフォーム」を採用。これは燃料電池車(FCEV)であるMIRAIと共通のものです。なぜセダンだけ駆動方式を変えるのか。これは、MIRAIの販売不振をクラウンのブランド力で補おうという、トヨタの「大人の事情」が透けて見えます。結果として、クラウンという一つの車名の下に、性格も骨格も異なる車が混在することになりました。

カスタムショップを経営していた頃、私はある教訓を得ました。それは、「何でも屋は、専門店の信頼には勝てない」ということです。ポルシェが911という絶対的なアイコンを軸にカイエンやマカンといったSUVを展開して成功したのは、まず911のブランドが盤石だったからです。翻って今のクラウンはどうでしょう。「セダン」という本丸のイメージが揺らいでいる中で4つのバリエーションを展開することは、かえって「クラウンとは何か」という問いの答えを曖昧にしてしまっているのではないでしょうか。この大胆な多角化戦略が吉と出るか凶と出るか、その答えが出るにはまだ時間が必要かもしれません。

デザインやコンセプトに対する評価を見てきましたが、車の評価はそれだけでは決まりません。次に、販売台数や価格、性能といった、より客観的なデータやリアルな評判から、新型クラウンの「失敗」説の真相に迫っていきます。

新型クラウンの失敗は本当?販売戦略と性能

新型クラウンの販売戦略と性能。失敗と言われる理由を解説。

  • 実際の販売台数データから見る売れ行き
  • 価格設定はターゲット層に受け入れられたか
  • 乗り心地や走行性能に対するリアルな評判
  • 若者へ訴求する戦略は成功したといえるか
  • 海外市場と国内市場における評価の違い
  • ライバル車と比較して見えた立ち位置

デザイン面での賛否両論は、ある意味で主観的な評価の域を出ません。では、販売台数という客観的な数字や、価格設定、走行性能といったリアルな評価はどうなっているのでしょうか。「本当に売れていないのか?」「価格に見合った価値はあるのか?」。ここでは、そうした誰もが抱く疑問に、具体的なデータと私のジャーナリストとしての視点、そしてディーラー時代の経験を織り交ぜながら、一つひとつ切り込んでいきます。新型クラウンが直面する現実を、冷徹に見つめてみましょう。

実際の販売台数データから見る売れ行き

実際の販売台数データから見る売れ行きの推移グラフ

「新型クラウンは売れていない」という声をよく耳にしますが、果たして本当にそうなのでしょうか。ここで、日本自動車販売協会連合会(自販連)が公表している販売台数データを基に、近年のクラウンの売れ行きを振り返ってみましょう。

以下の表は、15代目(S220型)から16代目への移行期を含む、クラウンの年間販売台数の推移です。

販売台数(台) 主な出来事
2018年 50,324 15代目 (S220型) 登場
2019年 36,125
2020年 22,173 マイナーチェンジ
2021年 21,411
2022年 17,767 9月に16代目クロスオーバー発売
2023年 43,029 16代目スポーツ、セダン登場

※出典:日本自動車販売協会連合会(自販連)の乗用車ブランド通称名別順位のデータを基に作成。

このデータを見ると、いくつかの事実が浮かび上がります。まず、15代目はモデル末期にかけて販売台数が大きく落ち込んでいること。そして、16代目が投入された2023年には、販売台数が前年比で2倍以上にV字回復していることがわかります。この数字だけを見れば、「売れていない」どころか「大成功」とさえ言えそうです。

しかし、ここに一つのトリックがあります。2023年の43,029台という数字は、クロスオーバー、スポーツ、セダンという複数のモデルの合算値なのです。一部の情報では、この販売台数の多くを、よりスタイリッシュで新しい顧客層に響いた「クラウンスポーツ」が牽引していると分析されています。もし、伝統的なセダンの後継と目された「クロスオーバー」単体で見れば、かつてのクラウンが誇った月販目標(登場時:4,500台)には及ばない可能性が高いでしょう。つまり、「クラウン」というシリーズ全体では回復基調にあるものの、その変革を象徴する最初のモデル「クロスオーバー」が市場に熱狂的に受け入れられたとは言い難い、というのが実情に近いのかもしれません。

では、この販売状況に大きな影響を与える価格設定は、ターゲット層にどのように受け止められたのでしょうか。

価格設定はターゲット層に受け入れられたか

ターゲット層の反応から価格設定の妥当性を分析するグラフ

新型クラウン(クロスオーバー)の価格は、435万円からスタートし、最上級グレードの「RS Advanced」では640万円に達します。この価格帯は、まさに輸入車Dセグメント(メルセデス・ベンツ CクラスやBMW 3シリーズ)や、国産の高級SUV(ハリアーやレクサスNX)と真っ向から競合する激戦区です。

トヨタの狙いは、従来の50代以上のオーナー層に加え、30代~40代の新しい顧客を獲得することでした。しかし、このターゲット層にとって、新型クラウンの価格設定は非常に悩ましいものに映ったはずです。例えば、同じ予算があれば、誰もが知るドイツのプレミアムブランドに手が届きます。あるいは、より実用性の高いハリアーの上級グレードや、ブランドイメージで勝るレクサスNXも視野に入ってくる。その中で、あえて「新しいクラウン」を選ぶだけの強い動機付けがあったでしょうか。

ここで、私のディーラー時代の苦い失敗談をお話しします。ある30代の経営者の方に、先代クラウンを提案した時のことです。私は性能やコストパフォーマンスを熱心に説明しましたが、彼は「悪くないけど、同じ値段ならベンツの方が分かりやすくない?」と言い残し、結局Cクラスを購入されました。この経験から学んだのは、特に新しい顧客層にとって、車の価値は性能や価格だけでなく、ブランドが持つ物語や周囲からの見え方(社会的記号性)が極めて重要だということです。新型クラウンは、「若返り」と「伝統」の狭間で、その記号性を明確に打ち出せたかというと、疑問が残ります。結果として、価格が「割高」と感じられてしまった可能性は否定できません。

価格に見合う価値があるかどうかは、もちろん性能次第です。次に、実際の乗り心地や走行性能に対するリアルな評価を見ていきましょう。

乗り心地や走行性能に対するリアルな評判

車の乗り心地と走行性能に関するリアルな評判・口コミ

「クラウンといえば、後席に乗っても快適な、雲の上を走るような乗り心地」。これは、長年クラウンが守り続けてきた金看板でした。しかし、新型クラウン(クロスオーバー)は、その伝統とも決別したようです。多くのジャーナリストやオーナーから指摘されているのが、大径の21インチタイヤ(上級グレードに標準装備)に起因する、ゴツゴツとした硬めの乗り心地です。

これは、スタイリッシュな大径ホイールを履きこなすために、サスペンションを固めざるを得なかった結果でしょう。デザインを優先した代償と言えます。もちろん、路面のきれいな高速道路を滑走する際の安定感は素晴らしいものがあります。しかし、私がジャーナリストとして日本の様々な道をテスト走行した経験から言うと、路面の補修跡や段差が多い市街地では、絶えず細かな振動を拾い、かつてのクラウンが持っていた「鷹揚さ」は感じられません。まさに「走る・曲がる・止まる」を追求した結果であり、これはこれで一つの進化の形ですが、伝統的なクラウンオーナーが期待する乗り味とは明らかに異なります。

一方で、走行性能、特に新開発の2.4Lターボエンジンとモーターを組み合わせた「デュアルブーストハイブリッドシステム」を搭載するRSグレードの動力性能は、非常に高く評価されています。システム最高出力349PSという力強い加速は、これまでのクラウンのイメージを覆すスポーティなもの。アクセルを踏み込めば、巨体をものともせずグイグイと前に押し出す感覚は、まさに痛快です。新型クラウンは、伝統の「快適性」を差し出す代わりに、新しい「走りの楽しさ」を手に入れた、と言えるのかもしれません。この変化を、ユーザーがどう受け止めるかが、評価の分かれ道となっているのです。

この「走りの楽しさ」は、まさに若者へ訴求したいという戦略の表れでしょう。では、その戦略は成功したのでしょうか。

若者へ訴求する戦略は成功したといえるか

若者向けマーケティング戦略の成功要因を分析するイメージ画像

いつかはクラウン」から「若者もクラウン」。この大きな舵取りは、トヨタにとって悲願でした。15代目でニュルブルクリンクでの走り込みをアピールし、ピンク色のクラウンまで登場させたものの、顧客の平均年齢を劇的に下げるまでには至らなかった。そこで16代目では、デザイン、コンセプト、走り、そのすべてを若い世代に向けて刷新するという、まさに乾坤一擲の勝負に出たわけです。

では、その戦略は成功したのでしょうか?答えは「道半ば」というのが正直なところでしょう。確かに、街中で新型クラウンを見かけたとき、ドライバーが以前より若い世代であるケースは増えたように感じます。SNSなどを見ても、斬新なデザインを好意的に受け止める若い世代の声は少なくありません。特に、後から追加された「クラウンスポーツ」は、その名の通りスポーティでコンパクトなSUVとして、新たなファン層を開拓しつつあります。

しかし、大きな障壁として立ちはだかるのが、やはり「クラウン」という名前そのものが持つ、強固な「オヤジセダン」のイメージです。これは、70年近い歴史が持つ功罪の「罪」の部分かもしれません。私がカスタムショップで働いていた頃、20代の若者が「スープラが欲しい」「86に乗りたい」と目を輝かせる姿は日常でしたが、「クラウンに乗りたい」という声を聞くことは、残念ながらほとんどありませんでした。車そのものは若者向けに生まれ変わったとしても、その車が持つブランドイメージを刷新するには、想像以上の時間と努力が必要なのです。トヨタが仕掛けた「クラウン明治維新」が、本当に新しい時代を築けるかどうかは、これからの数年間の評価にかかっていると言えるでしょう。

さて、このクラウンは国内専用車からグローバルカーへと生まれ変わりました。海外での評価と国内での評価には、何か違いがあるのでしょうか。

海外市場と国内市場における評価の違い

海外市場と国内市場における評価の違いを比較するイメージ図

16代目クラウンは、これまでの国内専用モデルという殻を破り、北米をはじめとする約40の国と地域で販売されるグローバルモデルへと変貌を遂げました。この「グローバル化」こそが、今回の大きな変革の根底にある動機です。そして、この内外での立場の違いが、評価の差を生み出す大きな要因となっています。

まず海外、特に主戦場となる北米市場において、「CROWN」という車名に歴史的な重みや特別なイメージはほとんどありません。彼らにとって、これはトヨタブランドの新しい高級クロスオーバーであり、長年販売されてきた大型セダン「アバロン」の実質的な後継車種という位置づけです。つまり、先入観なしに、純粋な新型車として評価されるわけです。そのため、斬新なデザインやFFベースのパッケージングに対するアレルギー反応は日本市場より少なく、「信頼性の高いトヨタが作った、スタイリッシュで快適な車」として、比較的スムーズに受け入れられているようです。

一方、日本市場での評価は、これまで述べてきた通り非常に複雑です。「いつかはクラウン」の記憶を持つ世代からの戸惑い、伝統の喪失に対する寂しさ、そして過去のモデルとの比較。常に「クラウンとはこうあるべきだ」という巨大な幻影と戦わなければならない宿命を背負っています。つまり、海外では「加点法」で評価されるのに対し、日本では無意識のうちに「減点法」で評価されてしまう傾向があるのです。この評価軸のねじれこそが、新型クラウンを巡る議論をより複雑にしている本質的な原因と言えるでしょう。

最後に、数多のライバルがひしめく市場の中で、新型クラウンはどのような立ち位置にいるのかを比較を通じて明らかにしてみましょう。

ライバル車と比較して見えた立ち位置

ライバル車と比較してわかる車の市場での立ち位置

ある自動車メディアが実施したアンケートで、「新型クラウン(クロスオーバー)のライバル車は?」という問いに対し、最も多く名前が挙がったのは、驚くべきことに「トヨタ・ハリアー」でした。本来であれば、メルセデス・ベンツEクラスやBMW5シリーズといった欧州Eセグメントが比較対象となるはずのクラウンが、自社の格下のSUVと比べられている。この事実は、新型クラウンの現在の立ち位置を象徴していると言えるかもしれません。

以下の表は、新型クラウン(クロスオーバー)と、主なライバルと目される車種のスペックや価格帯を簡潔に比較したものです。

車種 ボディタイプ 駆動方式 価格帯(約) 特徴
クラウン クロスオーバー クロスオーバー 4WD (FFベース) 435~640万円 セダンとSUVの融合、先進性
トヨタ ハリアー SUV FF/4WD 312~514万円 都市型SUVの王道、内外装の質感
レクサス NX SUV FF/4WD 485~753万円 プレミアムブランド、高い静粛性
メルセデス・ベンツ Cクラス セダン FR/4WD 690~890万円 伝統のFRセダン、ブランド力
シトロエン C5 X クロスオーバー FF 549~665万円 独創的デザイン、快適な乗り心地

この表から見えてくるのは、新型クラウンが非常にユニーク、悪く言えば「どっちつかず」なポジションにいるということです。SUVとして見ればハリアーより高価で、プレミアム性ではレクサスNXに一歩譲る。セダンの代替として見れば、伝統的なFRレイアウトを持つCクラスのような駆け抜ける歓びとは方向性が異なる。また、同じクロスオーバーというジャンルには、シトロエンC5 Xという強力な個性を持つライバルも存在します。結果として、新型クラウンは「あらゆる方向に配慮した結果、どの方向に対しても決め手を欠く」という難しい状況に置かれているように見えます。かつて「迷ったらクラウン」と言われた時代とは異なり、今は明確な目的意識がないと選びにくい車になってしまったのかもしれません。

結論:新型クラウンの挑戦は「失敗」ではなく「時代の必然」か

さて、ここまでデザイン、販売戦略、性能と、様々な角度から「新型クラウンは失敗か」というテーマを掘り下げてきました。数々の辛口な評価、そして私自身の戸惑いや失敗談も交えながら見てきた結果、私の結論はこうです。新型クラウンの変革は、単純な「成功」か「失敗」かで断じられるものではなく、日本の自動車史を背負う名門ブランドが、生き残りをかけて挑んだ「壮大な革命の序章」である、ということです。

確かに、伝統的なFRセダンとしてのクラウンは、16代目にして終焉を迎えたのかもしれません。長年のファンが抱く寂しさや戸惑いは、痛いほど理解できます。細部の質感やコンセプトの揺らぎなど、批判されるべき点も少なくないでしょう。しかし、もしトヨタが何もしなければ、「クラウン」という名前は、縮小するセダン市場と共に、静かに歴史の片隅へ追いやられていた可能性が高いのです。そうなる前に、自らの手で過去を壊し、4つもの全く新しい選択肢を提示した。この決断は、批判を覚悟の上での、未来への投資だったのではないでしょうか。

考えてみてください。クロスオーバーの登場から始まり、今ではスポーティなSUVの「スポーツ」、そして王道の「セダン」もFRで復活し、今後は実用的な「エステート」も控えています。これらはもはや一台の車ではなく、「クラウン・ファミリー」という、新しい価値観を持つブランド群なのです。今はまだその全貌が見えず、評価が定まらないのも当然かもしれません。

だからこそ、私はあなたにこう呼びかけたい。ネット上の「失敗」という一言で思考を止めてしまうのではなく、この革命の目撃者として、ご自身の目で、感性で、新しいクラウンという存在を確かめてみてはいかがでしょうか。そこには、賛否両論の喧騒の向こう側にある、トヨタが描こうとしている日本の高級車の新しい未来が、垣間見えるかもしれません。この物語の結末を決めるのは、メーカーではなく、我々ユーザー一人ひとりなのですから。

よくある質問

新型クラウンは本当に売れていないのですか?

いいえ、シリーズ全体の販売台数は2023年にV字回復しました。ただしこれはクロスオーバー、スポーツ、セダンなど複数モデルの合算値です。変革を象徴する最初の「クロスオーバー」単体が市場に熱狂的に受け入れられたとは言い難く、評価が分かれているのが実情です。

なぜ新型クラウンのデザインは「ダサい」と言われることがあるのですか?

歴代クラウンが持っていた重厚長大なセダンのイメージや、威厳のあるフロントグリルから大きく変わったためです。FFベースのクロスオーバーになったことによるシルエットの変化や、トヨタの他車種と共通のデザイン言語「ハンマーヘッド」が、従来のファンに「クラウンらしくない」と受け止められ、戸惑いや批判の声に繋がっています。

新型クラウンの乗り心地は悪くなったのですか?

伝統的な「雲の上を走るような」快適性とは方向性が変わりました。特に大径ホイールを履く上級グレードは、デザイン優先で足回りが硬めになり、路面の凹凸を拾いやすいという評価があります。その代わり、スポーティで安定した走行性能や力強い加速といった「走りの楽しさ」が向上しています。

新型クラウンの内装の質感は価格に見合っていますか?

価格に対して内装の質感が物足りないという厳しい意見があります。一部グレードでカップホルダーに蓋がない、ボンネットがガスダンパーではなく「つっかえ棒」であるなど、細部のコストダウンが指摘されています。歴代の重厚な高級感とは異なり、モダンで先進的な方向へシフトした結果、評価が分かれています。

なぜクラウンはセダンだけでなく、SUVなど4種類もボディタイプがあるのですか?

セダン市場の縮小という時代の流れに対応し、「クラウン」というブランドを存続させるための戦略です。多様化するユーザーのライフスタイルに、クロスオーバー、スポーツ(SUV)、セダン、エステートという異なる選択肢で応えようという狙いがあります。一方で、ブランドイメージが曖昧になる「迷走」ではないかという批判もあります。

新型クラウンは若者向けになったと言えますか?

デザインや走行性能は明らかに若い世代を意識して作られており、特に「クラウンスポーツ」は新たなファンを獲得しつつあります。しかし、「クラウン=年配者の車」という長年の強固なイメージを完全に払拭するには至っておらず、若者への訴求戦略はまだ「道半ば」と言えるでしょう。

海外での新型クラウンの評価はどうですか?

海外、特に北米市場では「クラウン」という車名に過去のイメージがないため、先入観なく「トヨタの新しい高級クロスオーバー」として評価されています。一方、日本では「歴代クラウンかくあるべし」という強い固定観念があるため、変化に対する戸惑いや批判が出やすく、国内外で評価の軸が異なっているのが現状です。

渡辺 悠真

最後までお読みいただき、ありがとうございます。伝統を破り、世界市場を狙った新型クラウンの挑戦は、失敗ではなく進化の序章なのかもしれません。あなたはこの変革をどう受け止めますか?実車を前にしたとき、その答えはきっと変わるはずです。

クラウンスポーツは売れてない?販売不振の噂と本当の人気を徹底解剖

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